社労士試験攻略!平均賃金・休業手当の計算方法と重要論点を徹底解説
社労士試験を目指す皆さん、労働基準法の学習は順調ですか?
中でも「平均賃金・休業手当等」は、出題頻度が高く、計算問題も絡むため、多くの方が苦手意識を持つ論点かもしれません。平均賃金の算定期間や除外項目、休業手当の「使用者の責に帰すべき事由」といったキーワードは、まさに合否を分けるポイントになります。
結論から言うと、この論点を攻略するには、原則的な計算方法を理解した上で、例外規定や調整事項をいかに正確に覚えているかがカギになります。 ただ暗記するのではなく、具体例を通して「なぜそうなるのか」を理解し、アウトプット練習を繰り返すことで、記憶の定着を促していきましょう。
この記事では、平均賃金の算定方法から休業手当、出来高払制の保障給、そして関連する最低賃金法まで、社労士試験合格に必要な知識を分かりやすく解説していきます。複雑な概念も、具体的な数字や条文を交えながら、段階的に理解できるように構成しました。
1. 「平均賃金」とは? なぜ重要なのか
まず「平均賃金」とは、労働基準法第12条に定められた、労働者の生活保障を目的とした賃金算定の基準です。解雇予告手当、休業手当、年次有給休暇中の賃金、災害補償などの金額を計算する際に用いられます。
社労士試験において、この平均賃金は毎年出題される可能性が高い重要テーマです。特に、その複雑な算定方法や、計算から除外される賃金・期間、そして最低保障額の考え方まで、細かい知識が問われます。過去問を見てみると、単純な計算だけでなく、条文の趣旨や具体的な事例への適用を問う問題も多く出題されています。
2. 平均賃金の算定方法:3ステップでマスター
平均賃金の算定は、次の3ステップで考えると整理しやすいですよ。
Step 1. 原則額を計算する Step 2. 最低保障額を計算する Step 3. 両者を比較して、高い方の額を平均賃金とする
まずはこの流れを頭に入れて、具体的な内容を見ていきましょう。
(1) Step 1. 原則的算定方法の理解
労働基準法第12条第1項・第2項に定められている、平均賃金の基本的な計算方法です。
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算定期間(第12条第1項、第2項) 原則として、「算定事由発生日以前3箇月間」が対象です。 ただし、賃金締切日がある場合は、直前の賃金締切日から起算します。ここが試験でよく狙われるポイントなので、しっかり押さえてください。実務上もこのパターンがほとんどです。
例えば、算定事由発生日が8月10日で、賃金締切日が毎月末日の場合、直前の賃金締切日は7月31日になります。そこから3ヶ月遡るので、算定期間は「5月1日~7月31日」となるわけです。
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計算式(第12条第1項本文) 平均賃金 = 算定期間中の賃金総額 ÷ 算定期間中の総日数(暦日数)
ここで言う「賃金総額」とは、税金や社会保険料が控除される前の、いわゆる額面(税込み賃金)のことです。
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具体例で計算してみよう! 実際に手を動かして計算してみるのが、知識を定着させる一番の近道です。これは認知科学でいう「テスト効果」と呼ばれるもので、アウトプットすることで記憶が強化されることが多くの研究で示されています。
- 賃金締切日:毎月末日 / 支払日:翌月15日
- 算定事由発生日:8月10日
- 算定期間:直前の賃金締切日は7月31日。そこから3箇月遡るので、5月1日~7月31日となります。
- 各月の賃金と日数:
- 5月分賃金:300,000円 (総日数:31日)
- 6月分賃金:310,000円 (総日数:30日)
- 7月分賃金:305,000円 (総日数:31日)
- 計算
- 賃金総額:300,000 + 310,000 + 305,000 = 915,000円
- 総日数:31日 (5月) + 30日 (6月) + 31日 (7月) = 92日
- 原則額:915,000円 ÷ 92日 = 9,945.65円(銭未満は切り捨て)
(2) 分子(賃金総額)と分母(総日数)の調整:試験の狙い目!
単純な計算だけでなく、分子・分母から特定のものを除外・控除するルールがあります。ここが社労士試験の頻出ポイントであり、受験生が間違いやすい部分です。
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賃金総額に「算入しない」もの(第12条第4項) 特定の賃金は、臨時的であったり、算定期間を超える長期にわたるものであるため、平均賃金の算定には含めません。
- 臨時に支払われた賃金: 結婚手当、私傷病手当、退職金など。
- 三箇月を超える期間ごとに支払われる賃金: 賞与(ボーナス)が典型例です。6箇月ごとに支払われる通勤手当などもこれに該当します。
- 通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないもの: 法令や労働協約に基づかない現物給付など。
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期間と賃金から「控除する」もの(第12条第3項) 以下の期間がある場合、その日数(分母)と、その期間中の賃金(分子)の両方を算定基礎から控除します。 趣旨: 労働者に責任のない事由で賃金が低くなった(または無給だった)期間を除くことで、平均賃金が不当に低くなるのを防ぐためです。
控除対象期間
- 業務上の負傷・疾病による療養のための休業期間
- 産前産後の女性が労働基準法第65条の規定によって休業した期間
- 使用者の責めに帰すべき事由によって休業した期間
- 育児休業、介護休業した期間
- 試用期間
これらの控除期間は、それぞれが持つ趣旨を理解すると、丸暗記よりも忘れにくくなりますよ。
(3) Step 2. 最低保障額の計算と Step 3. 比較
原則額だけでは、日給制や時給制の労働者、あるいは所定労働日数が少ない月の平均賃金が不当に低くなる可能性があります。そこで、労働基準法第12条第5項では「最低保障額」を設けて、労働者の生活を保護しています。
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日給・時給・出来高払制の場合 賃金総額 ÷ 算定期間中の実労働日数 × 60/100 (ただし、賃金総額から控除対象期間中の賃金を除き、総日数から控除対象期間中の日数を除いて計算します。)
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その他の場合(月給制・週給制など) 原則額と同じ
最終的に、Step 1で計算した原則額と、Step 2で計算した最低保障額を比較して、高い方の額が平均賃金となります。この「比較して高い方」という部分も、試験で確認されることがあるので注意してくださいね。
3. 休業手当の重要ポイント(労働基準法第26条)
平均賃金と並んで、社労士試験で非常に重要なのが「休業手当」です。労働基準法第26条に規定されています。
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要件:使用者の責めに帰すべき事由 休業手当の支払義務が生じる最大のポイントは、「使用者の責めに帰すべき事由」によって労働者を休業させた場合です。
- 「使用者の責めに帰すべき事由」とは? 単に会社側の故意や過失だけでなく、経営上の都合(例:機械の故障、原材料の仕入れ難、販売不振による生産調整)や、不可抗力ではない外部要因(例:取引先の倒産)なども広く含まれます。 ただし、地震や台風といった「不可抗力」と認められる場合(事業主が予防に最大限の努力を尽くしても避けられない場合)は、使用者の責めに帰すべき事由には当たりません。
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効果:平均賃金の100分の60以上 使用者の責めに帰すべき事由によって休業させた場合は、その休業期間中、使用者は労働者に対して平均賃金の100分の60以上を支払わなければなりません。
- この「60/100」という数字は重要です。過去問でも、この割合が問われることがあります。
- 休業手当の対象となるのは、実際に労働者が労働することが可能であったにもかかわらず、使用者の都合で休業を余儀なくされた日数です。労働義務のない休日(法定休日や所定休日)は対象外となります。
4. 出来高払制の保障給(労働基準法第27条)
外勤営業職など、成果に応じて賃金が変動する「出来高払制」の労働者にも、労働基準法第27条によって最低限の生活を保障するための制度が設けられています。
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概要 出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならないとされています。
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計算方法 具体的には、その労働者が通常の賃金を得たであろうと推定される時間に対する賃金の100分の60に相当する額が、最低保障額として支払われるべきとされています。これも平均賃金の最低保障額や休業手当と同じく「60/100」という数字が出てくるので、関連付けて覚えておくと良いでしょう。
5. 最低賃金法との関連(最低賃金法)
労働基準法における平均賃金とは別に、労働者の賃金の最低額を保障する「最低賃金法」があります。社労士試験では、この両者の違いや適用範囲も問われることがあります。
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概要 最低賃金法は、使用者が労働者に支払うべき賃金の最低額を定めるもので、使用者は最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません(最低賃金法第4条)。もし最低賃金額を下回る賃金しか支払われていなくても、その契約は無効となり、最低賃金額を支払うべきものとされます。
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最低賃金の種類
- 地域別最低賃金: 各都道府県に一つずつ定められ、その地域内の全ての労働者に適用されます。
- 特定(産業別)最低賃金: 特定の産業について、地域別最低賃金よりも高い水準で定められる最低賃金です。当該産業の労働者に適用されます。特定最低賃金と地域別最低賃金が両方適用される場合は、高い方の最低賃金が適用されます。
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最低賃金の対象となる賃金 時間給で計算されることが原則です。月給や日給の場合は、時間給に換算して比較します。 以下の賃金は、最低賃金の対象となる賃金からは除外されます。
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
- 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
- 精皆勤手当、通勤手当、家族手当
これらの除外項目は、平均賃金の「算入しない賃金」と似ている部分もあれば、異なる部分もあります。例えば、精皆勤手当や通勤手当、家族手当は平均賃金には算入されますが、最低賃金の計算からは除外される点に注意が必要です。異なる法律で、それぞれ趣旨が異なるため、除外項目も異なるということを意識してみてください。
6. 複雑な概念を効率的に学習するコツ
ここまで見てきたように、「平均賃金・休業手当等」の論点は、計算、期間、除外項目、そして関連法規と、覚えることが多いですよね。ここで、皆さんの学習効率を上げるためのヒントをいくつか紹介します。
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アウトプットを重視する(テスト効果) 複雑な計算問題や、複数の除外項目を問うような選択肢問題は、テキストを読むだけではなかなか定着しません。必ず問題を解き、自分の頭で情報を検索し、答えを導き出す練習をしてください。この「テスト効果」は、記憶を強固にする最も有効な方法の一つです。解けなかった問題は、解説を読んで理解した上で、少し時間を置いてからもう一度解き直すのがおすすめです。
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異なる概念を比較・整理する(精緻化) 「平均賃金の算入しない賃金」と「最低賃金の対象とならない賃金」のように、似たような言葉で異なる概念が出てきたときは、表にまとめて比較すると混乱しにくくなります。それぞれの項目が「なぜ」その法律では対象になったりならなかったりするのか、立法趣旨に立ち返って考えると、バラバラの知識が有機的に繋がり、「精緻化」された記憶として定着しやすくなります。
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期間を空けて繰り返す(分散学習) 人間の記憶は、一度覚えただけではすぐに忘れてしまいます。この論点も、一度学習したら終わりではなく、数日後、1週間後、1ヶ月後といった具合に、**少しずつ間隔を空けて復習する「分散学習」**を取り入れてみましょう。特に「算定期間」や「60/100」といった数字、そして「使用者の責めに帰すべき事由」のような重要キーワードは、定期的に確認することで長期的な記憶として定着しやすくなります。
まとめ:平均賃金・休業手当のポイント再確認
社労士試験における「平均賃金・休業手当等」は、単なる暗記ではなく、概念の理解と具体的な適用能力が問われる重要論点です。
- 平均賃金: 原則額・最低保障額の3ステップを徹底理解。特に、算定期間の起算日、分子・分母からの除外・控除項目は試験の要点です。
- 休業手当: 「使用者の責めに帰すべき事由」の判断と、「平均賃金の60/100」という数字を確実に押さえましょう。
- 出来高払制の保障給: 労働基準法第27条、通常の賃金の「60/100」を保障。
- 最低賃金法: 労働基準法とは別枠の賃金保障。平均賃金との対象賃金の違いを理解しておくこと。
これらのポイントを意識しながら、過去問演習を通して知識を定着させていくことで、この論点を得意分野に変えていけるはずです。ぜひ、今日からこれらの学習法を試してみてください。